■観世アーカイブについて
 「観世アーカイブ」は、観世文庫が所蔵する能楽関係文献資料をインターネット上で検索・閲覧できるデジタル・アーカイブです。
 観世文庫は、観世流宗家に伝来した能面や装束とともに、代々の観世大夫が残した膨大な文献資料を管理・保管しています。そこには、世阿弥自筆の能楽論書や能の台本といった能楽史上の最重要文献のほか、これまでその存在すら知られていなかった多数の文書が含まれています。

 これらは、室町時代以来の能楽の歴史的展開を解き明かす貴重な資料群ですが、従来は研究者が限られた機会にその一部にアクセスできるだけでした。「観世アーカイブ」は、この資料群に対する網羅的な調査と撮影をふまえて構築されました。これによって世界中の誰でも、全資料についてその書誌情報を検索することが可能になり、またほとんどの資料について、写真画像によってその内容を閲覧することが可能になりました。

 能楽や日本文化に関心を寄せる世界中の研究者や愛好家に、本アーカイブが活用されることを願っています。
■観世アーカイブの成り立ち
 観世文庫は、財団法人として1991年に設立されました(2013年に一般財団法人へ移行)。観阿弥・世阿弥が活躍した室町時代から現代に至るまでの代々の観世宗家が守り伝えてきた貴重な能楽資料を保存・活用することを活動目的としています。2002年に観世文庫は新たな資料保管設備を整える計画を立て、文献資料のアーカイブ化を前提とした包括的な調査を財団理事の松岡心平(東京大学)に依頼しました。

 松岡は国文学研究資料館の協力もとで調査チームを編成し、2003年より調査を開始しました。2006年からは、松岡を研究代表者とする日本学術振興会科学研究費補助金「観世文庫所蔵能楽関係資料のデジタル画像化と解題目録作成に向けた総合的研究」(基盤研究〔A〕、課題番号:18202006)の交付を受けて調査が大きく進展します。観世文庫に寄贈・寄託された六千点に及ぶ文献資料の全体像を把握したうえで、基礎的書誌調査と写真撮影を完遂し、これをデータベース化しました。能楽や日本文化に関心を持つ世界中の人々にこの成果を公開するために、2009年、このウェブサイト「観世アーカイブ」を構築し、公開しました。

 調査の成果は、展覧会「観世家のアーカイブ―世阿弥直筆本と能楽テクストの世界―」(会場:東京大学駒場博物館、会期:2009年10月10日~11月29日)でも公開されました。この展覧会を通じて、観世文庫にどのような文献資料があるのか、そして本ウェブサイトの公開にどのような意義があるのかを、広く社会に紹介しました。2011年にはアート・ドキュメンテーション学会より、本アーカイブ公開に至る観世文庫の取り組みに対して、第5回野上紘子記念アート・ドキュメンテーション推進賞が授賞されました。

 観世文庫所蔵資料に対する調査プロジェクトは、2010年より「観世文庫所蔵能楽関係資料のデジタル・アーカイブを活用した新しい能楽史の構築」(基盤研究〔B〕、課題番号:22320047)に引き継がれました。このプロジェクトでは、観世アーカイブを活用した研究により江戸期の観世流の実態に新たな光を当てるとともに、アーカイブを充実させることを目指しました。その成果を踏まえ、2014年に本サイトをリニューアルし、資料分類を見直し、書誌情報を拡充し、専門家以外の人にも利用しやすいようにデザインを見直しました。

 観世文庫調査は、2015年より第三次のプロジェクト「観世家のアーカイブの形成と室町期能楽の新研究」(基盤研究〔B〕、課題番号:26284037)に引き継がれています。調査途中の書誌情報を加え、閲覧できる写真画像を増やしていくなど、一層のアーカイブの充実をはかってまいります。
(文責:横山太郎)