学位論文要旨



No 119339
著者(漢字) 包,迎春
著者(英字) Hoo,Geishun
著者(カナ) ホー,ゲーシュン
標題(和) 細胞の増殖と分化に関与するMgcRacGAPの核移行シグナルの同定とその機能の検討
標題(洋)
報告番号 119339
報告番号 甲19339
学位授与日 2004.03.25
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第2313号
研究科 医学系研究科
専攻 生殖・発達・加齢医学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 渋谷,正史
 東京大学 教授 竹縄,忠臣
 東京大学 教授 岡山,博人
 東京大学 講師 高見澤,勝
 東京大学 講師 神崎,恒一
内容要旨 要旨を表示する

MgcRacGAPは増殖と分化の調節機構と細胞分裂との両者おいて、重要な働きをもつ分子である。今回、学位申請者は、MgcRacGAPのいろいろな欠損変異体の細胞内における局在を検討し、その165-204番目のアミノ酸配列が核移行に必要であることを明らかとした。さらにこの配列中の塩基性アミノ酸クラスターLys182,/Arg183/Arg184およびLys199/Lys200に対するアラニン置換型変異体が核移行できないことを見出した。これらが双極型の核移行シグナル (NLS) として働いている可能性が考えられたため、MgcRacGAPが importin のシステムを介して核移行するのか否かを検討した。優生劣性変異体である importinβ1のC末端欠損変異体(β1Δ450-867)をHeLa細胞に過剰発現すると、ほとんどの内在性MgcRacGAPが細胞質内にのみ局在し、核への移行が障害された。このことからMgcRacGAPが importinβ1を利用して核移行している可能性が強く示唆された。yeast two-hybrid の系を用いてMgcRacGAPと importinα1,α3,α4α5,α6,およびβ1が結合するか否かを検討し、importinα1のみがMgcRacGAPと結合することを見出した。さらに importmα1およびβ1をバキュロウイルスの系を用いて発現させ精製し、各々のタンパクを用いた pull-down アッセイを行ったところ、MgcRacGAPは importinα1と結合するがβ1とは結合しないことを見出した。これらよりMgcRacGAPは importinα1と直接結合し、α1をアダプターとしてβ1を介して核移行する可能性が示唆された。またRacがMgcRacGAPの局在を制御するか否かを検討した。MgcRacGAPと恒常的活性化型変異体RacV12を共に過剰発現すると、MgcRacGAPの一部は細胞膜付近に集積して局在した。MgcRacGAPと恒常的不活性化型変異体RacN17を共に過剰発現してもMgcRacGAPの局在はほとんど核のみであり変化が見られなかった。これらの結果からMgcRacGAPは双極型NLSを利用して核移行し、核外移行するときには活性化Racにより核膜から細胞膜方向に運ばれる分子である可能性がある。

審査要旨 要旨を表示する

MgcRacGAPは細胞の増殖、分化に関与する分子と考えられている。MgcRacGAPはHeLa細胞のような付着細胞の場合、interphase では主に核内に局在する。本研究はMgcRacGAPの核移行に関わる分子メカニズムについて検討したものであり、下記の結果を得ている。

MgcRacGAPのさまざまな欠失型変異体の細胞内における局在を検討した実験から、165-204番目のアミノ酸配列が核移行に必要であることが明らかとなった。さらにこの配列中の塩基生アミノ酸クラスターK182/R183/R184およびK199/K200をそれぞれアラニンに置換すると核移行できないことからこの配列が双極型の核移行シグナル (NLS) として働いている可能性が示唆された。

yeast two-hybrid の系を用いてMgcRacGAPと importin α1,α3,α4,α5,α6およびβ1が結合するか否かを検討し、importin α1のみがMgcRacGAPと結合することを見出した。さらにバキュロウイルスの系を用いて importin α1およびβ1を精製し、この精製タンパク質を用いた pull-down アッセイを行ったところ、MgcRacGAPは importin α1と結合するがβ1とは結合しないことを見出した。これらよりMgcRacGAPは importin α1と直接結合し、β1を介して核移行することが示唆された。

K182/R183/R184およびK199/K200のそれぞれ、および両方のアラニン置換型変異体を作製し importin α1との相互作用を検討したところ、相互作用は見られなかった。これらの結果より、MgcRacGAPとimportin α1の相互作用はK182/R183/R184およびK199/K200の2つの塩基性アミノ酸クラスターからなる双極型NLS様の配列を介していることが強く示唆された。

ドミナントネガティブ変異体である importin β1のC末端欠失型変異体(β1Δ450-867)をHeLa細胞に過剰発現すると、ほとんどの内在性MgcRacGAPが細胞質内にのみ局在し、核への移行が障害された。このことからMgcRacGAPが importin β1を利用して核移行していることが示唆された。

以上、本論文は細胞増殖、分化に関与する分子であるMgcRacGAPの核移行の分子メカニズムにおいて、双極性のNLSを介して importin α1と結合し、importin β1を利用して核移行していることを明らかにした。本研究はMgcRacGAPの細胞増殖、分化に関与する分子メカニズムの解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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